572: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 21:17:45.59 ID:JAZYyXaFo
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さっき書き終わったばかりなんで始まります。

引用元: 『終末艦これショート』

573: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 21:18:58.32 ID:JAZYyXaFo


【装甲空母は砕けない】 



どうも! 装甲空母大鳳です! 翔鶴型を改良して生まれた最新鋭の空母で、 
この度、栄えある連合艦隊に配属されることになりました。 
かつての戦いではあまり活躍できなかったけれど、大丈夫! 
今の私はあの頃と違って十分な設備と人員によって生まれました! 
これで本来の力をお見せすることができるわ! 
今度の敵は海を跋扈する謎の艦隊、深海棲艦。海の平和を脅かす不届き者に、 
装甲空母の力、とくと見せてあげる! ……負けないわ! 



574: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 21:21:49.37 ID:JAZYyXaFo

――鎮守府・港―― 



大鳳「艦隊、帰投しました!」 


響「おつかれ。今日も大鳳はすごかったね」 

暁「大鳳さんが先制攻撃で殆ど撃沈しちゃうんだもん。暁達の出番が無かったわ」 

大鳳「今日はたまたま絶好調だっただけですから!」 

矢矧「……そんなこと言って、もう随分と長いことMVPの座を 
独占しているのではないのかしら?」 

矢矧「過度な謙遜は嫌味になるわ。気をつけたほうがいいわよ」 

大鳳「あ、すみません……」 

大鳳(……言ってもいいのかしら? 相手の深海棲艦が弱すぎるって) 

大鳳(ううん駄目。それこそ本当に嫌味になっちゃうわ) 

大鳳(私は最新鋭の装甲空母。艤装も装備も最新式……旧式の艦より強くて当然なんだから 
それに驕ってはダメ……) 


とは思いつつも、大鳳は深海棲艦の手応えの無さに拍子抜けしていた。 
他の艦娘が苦戦する深海棲艦とはこの程度なのかと、侮っていた。 


大和「矢矧、お疲れ様」 

矢矧「あら大和。出迎えてくれるなんて珍しいわね」 

大和「……出迎えというか、監視というか」 

長門「ほーれほれ駆逐達よ、疲れてはいないか? ラムネあるぞ?」 

矢矧「……なるほど」 

大和「長門さん、それ、変なもの入ってないですよね?」 

長門「何だその目は、失礼な。私がくちくにそんなことするはずがないだろう!!」 

大和「駆逐艦ラムネとか売ってた人が言っても説得力無いんですよ」 

長門「大和……新米の頃は可愛かったのに、こんなに生意気になって」 


長門「その点駆逐はいい!! 時を経てもその純粋さは 
変わることがないのだからな!! だからこそ気にいった!!」 


大和「はぁ……」 


575: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 21:24:45.98 ID:JAZYyXaFo

大鳳「……」 

大和「? 大鳳さん? 何でしょうか?」 

大鳳「あ、いえ……」 

大鳳(彼女は、連合艦隊最強の戦艦である大和さん。そしてあちらがビックセブンと謳われた 
戦艦長門さん) 

大鳳(……お二方は連合艦隊の顔ともいうべき存在。そして戦艦としては完成された性能を 
持っている。ですが……心配です) 

大鳳(彼女達は強い。けれど、戦艦では……限界がある) 

大鳳(この先、どこまでその大艦巨砲主義を貫き通せるのか……) 


司令「やぁ、大鳳ちゃん。お疲れ様~」 


大鳳「あっ、提督! お疲れ様です!」 

長門「……ふん、何をしに来た? 貴様」 

司令「僕が僕の艦隊の艦娘の様子を見て何が悪いんだい? 
あと長門君さぁ、上官に対して貴様はないんじゃない?」 

長門「私の上官はかつてこの鎮守府を指揮していたあいつだけだ」 

司令「……はぁ、もうさ、亡くなった方の話は止そうよ。 
死んだんだからそっとしておいてあげなって」 

長門「貴様……どの口d」 


大和「口を慎みなさい……ッ!」 



576: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 21:27:30.87 ID:JAZYyXaFo

大鳳「!?」 

長門「大和……」 

大和「あなたのような人間が、彼のことを軽々しく口にするのは許されない……!」 

大鳳(大和さんがこんなに怒るなんて……) 

司令「……ひー、怖い怖い。ったく、態度と消費資材の量だけは超弩級なんだからなぁ~ 
連合艦隊旗艦様は」 

大和「…………」 

長門「……時に提督様よ、貴様……確か『次世代型艦娘建造計画』とかで 
忙しいんじゃなかったのか?」 

司令「あー……アレは僕向きじゃあ無いから他の人間に任せたよ」 

長門「……まるでおもちゃだな」 

司令「何か言ったかい?」 

長門「いや……何も」 

大鳳(提督は、艦娘の皆と仲がとても悪いです……私としては、 
皆仲良くしてもらいたいのですけれど……) 

司令「……あー、とりあえずさ、大鳳ちゃんはいつもの人に戦果の報告しといてね」 

大鳳「あ、はい」 

司令「それじゃあ僕は失礼するよ……何だかおじゃま虫みたいだからねぇ?」 


そうして、今現在この鎮守府の提督を務める男は去っていった。 


長門「……ふん、提督の椅子に座っているだけのボウフラが」 


彼の背中を見送る艦娘達の目は皆、嫌悪の色に満ちている。 
誰もが皆視線にストレスを内包していた。 
……しかし大鳳は違った。 
だからこそ大鳳は何だかとても居心地が悪くなってしまい、 
そそくさと彼女達のグループから離れていったのだった。 



577: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 21:30:17.71 ID:JAZYyXaFo

大鳳「はぁ……こんなにギスギスしてて大丈夫なのかしら」 



「指揮官と兵士が対立し、基本的な組織行動さえままならない。 
戦争以前のお粗末な状況だな……」 



大鳳「……あなたは」 

研究員「そろそろ覚えてくれたぁー? 自己紹介とか面倒だし二度はしないって」 

大鳳「確か、花見さん……でしたよね?」 

研究員「そうだよぉ。覚えてくれて、ありがとにゃん!」 

大鳳「はぁ……」 

大鳳(この人は……妖精さん達による新型兵装の研究に携わっている研究員……らしいですけど) 

大鳳(つかみどころがないというか、得体の知れないというか、変な喋り方というか) 

研究員「何? 僕のことそんなに見つめてどうするの?」 

大鳳「……あなた、本当に研究に関わっているの?」 

研究員「疑うのか……この私を」 

大鳳「だって、ある日突然研究だデータだって言われて一方的に調査されて 
……私には実態がまるで見えてこないもの」 

研究員「調査は秘密裏に行われるものだ……情報が連中の手に渡らんようにな……」 

大鳳「誰ですか連中って……」 

研究員「悪の組織」 

大鳳「真顔で言わないでください」 


578: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 21:37:20.23 ID:JAZYyXaFo

研究員「もー、大鳳さんは疑り症なのです!」 

大鳳「せめて証拠のようなものを見せていただければ……」 

研究員「それも、ひ・み・つ? 乙女には秘密が付き物なのよぉ~?」 

大鳳「……何も教えてくれないのね」 

研究員「でもさ、新しい機体を使うのは楽しいでしょ?」 

大鳳「そうですけど……」 


大鳳は彼女に頼まれて、度々新型の兵器のテストプレイをしていた。 
大鳳自身新鋭機であるので、試験的に機体を運用するのは慣れていた。 


研究員「お前は新しい装備が使えて嬉しい。私はデータが取れて嬉しい。 
ギブアンドテイクではないか……?」 

大鳳「それは、まぁ」 

研究員「だったらさぁ~、そういうめんどいことは詮索しないで欲しいんだよねぇ~」 

大鳳「……むぅ」 

研究員「ほらほら、わかったらデータ取り終わった艦上機をさっさと返してよね」 

大鳳「……因みに」 

大鳳「この機体の名前はなんですか? もしかして、橘花……?」 

研究員「んぁ? まー……結構いい線いってるんじゃない?」 

大鳳「……違うの?」 

研究員「これ以上はノーコメント♪」 



579: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 21:42:04.44 ID:JAZYyXaFo

大鳳「……」 

研究員「どうしたの? 浮かない顔だね」 

大鳳「……何でみなさんは、提督の事が嫌いなのでしょう?」 

研究員「唐突だな。今に始まったことでもないだろう?」 

大鳳「やっぱりこのままじゃ……まずいと思います」 

大鳳「絶対良くないわ、こんな状況。お互い歩み寄っていかなくちゃ……」 

研究員「このままじゃまずいってことくらい、誰だって 
判ってんじゃないのー?」 

大鳳「じゃあ、何で……」 


研究員「……お前はなんのために戦っている?」 


大鳳「えっ……?」 

研究員「何のために戦っている?」 

大鳳「……そんなの、深海棲艦を倒すために決まっています」 

研究員「……なるほどー。まぁ、50点ってとこかなぁ~?」 

大鳳「どういうことですか?」 

研究員「……まぁ、50点程度なら問題ないよ。だけど提督はそれが……」 


研究員「0点だっただけって話」 


大鳳「0点?」 

研究員「本質的に奴とここの艦娘は合わないのだ。 
両者は永遠に平行線を行く存在だ」 

研究員「私もあいつは好きじゃないしにゃあ」 

大鳳「……そう、ですか……」 

研究員「奴はそれだけのことをしてきた。今更その穴を埋めようとしても 
穴は無限にそれを飲み込んでいくだけだろう」 

研究員「ま、もっともあの人は穴を埋める気も無いだろうけどね」 


580: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 21:47:50.58 ID:JAZYyXaFo
大鳳は比較的着任が新しい艦娘だ。だから彼女は知らない、"東方作戦"の全容を。 
故に大鳳は、他の艦娘と違ってあの新しい提督にも別け隔てなく接する。 
そんな彼女に、人は愚かだとか哀れだとかいう感情を向けた。 
だから大鳳はいつも言いようのない居心地の悪さを感じていた。 

皆に仲良くして欲しいというのは彼女の本心ではあるものの、その言葉には 
彼女自身の「この居心地の悪さを解消したい」という思いも少なからず含まれていただろう。 

現に今も、大鳳は居心地の悪さを感じていた。目の前の研究員の少女に向けられる視線によって。 


大鳳「……あなたは」 

研究員「……何かしら?」 

大鳳「あなたは何の為に研究をしているんですか?」 

研究員「そんなことを聞いてどうする?」 

大鳳「何かかしら理由があるものじゃないですか……なんとなく気になって」 

研究員「……そうだねぇ」 


研究員「……私は、皆の想いに動かされているだけ」 


大鳳「想い……?」 

研究員「皆の想い、その延長線上にたまたま私がいた。それだけのこと 
私の全ては私の意志じゃない」 

大鳳「……どういう、意味ですか?」 

研究員「さぁねっ!」 


一瞬、本当に一瞬だけど、大鳳は本当の彼女を垣間見た気がした。 









研究員「……私としたことが、余計なことを話してしまいました」 

研究員「……それであなたは、いつまでそこで隠れて見ているの?」 

研究員「……これを積みたいって? ……これはあなたには過ぎたるもの、です」 

研究員「そう消沈しないでください。もうすぐあなたは……生まれ変わるのですから」 




581: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 21:51:16.90 ID:JAZYyXaFo

――鎮守府・空母演習場―― 



ブウゥゥゥゥン…… 

大鳳「……やっぱりさっきの機体より烈風のほうが使いやすいわね! 
この編隊が見たかったの!」 

青葉「いやぁ~凄いですね! 烈風! 流石は大鳳さん!」 

大鳳「あなたは、重巡の……」 

青葉「青葉です! 恐縮です~。大鳳さんの素晴らしいご活躍は常々耳にしております! 
いやぁその強さの秘訣、知りたいものですねぇ? どうですか? コラムなど連載されてみては? 
バックアップしますよ~?」 

大鳳(……鎮守府で落ち着ける場所が欲しいと思うのは、贅沢かしら?) 

青葉「あ、なんか露骨に煙たがっている顔してますね~?」 

大鳳「そ、そんなつもりじゃ……」 

青葉「わかりましたよ~。大鳳さんにはここだけの特ダネ、教えします! 
だから機嫌直してくださいね?」 

大鳳「特ダネって?」 

青葉「……ある一部の艦娘のみが見る、謎の妖怪の話です。そいつは両手で猫を掴んで 
艦娘の前に現れ、意味深な言葉を残して去っていく……」 

大鳳「妖怪? ばかばかしい……」 

青葉「それが馬鹿にできないんですってば。初めに見たのは確か 
……千歳さんだった筈です」 

青葉「彼女は何の前触れもなく突然現れたと言います。 
そして自らのことを"エラー"と名乗ったとか」 

大鳳「……で、そのエラー娘が何を言ったの?」 



青葉「『あなたは運命の超越者足りえるか?』と」 



582: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 21:53:28.62 ID:JAZYyXaFo

大鳳「運命の超越者……?」 

青葉「意味はわかりません。でも、気になる言葉ですよね?」 

大鳳「そうかしら?」 

青葉「あとは北上さんや大井さん、それに響さんも出会ったそうです。 
彼女達の時は上記した言葉の他に『深海棲艦の正体は何だと思いますか?』だとか 
『この世界の理を感じていますか?』だとか言って……とにかく意味深なんですよ」 

青葉「コイツ絶対なにか知ってますよ! はぁ~……できることならお会いしたい! 
そして、心ゆくまで取材させていただきますぅ!」 

大鳳「……はぁ、所詮与太話でしょ? 北上さん達、そういうの好きそうだし…… 
きっとからかわれているのよ、あなたは」 

青葉「いいえ! 私のゴーストが囁くのです! これはマジモンだって……」 

大鳳「……どこにそんな根拠があるのやら」 


バカバカしいと思いながらも大鳳は、心がざわめくのを感じていた。 
得体の知れない気持ち悪さが喉元までせり上がってきたけれど、 
今更その話に食いつくのも気が進まなかったので、大鳳はその気持ち悪さを 
ぐっと飲み込み、自らの体内で消化した。 


―――――― 
――― 
― 



583: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 21:55:36.39 ID:JAZYyXaFo

――鎮守府・港―― 



大鳳「艦隊帰投いたしました!」 

潮「疲れ、ました……」 

朧「早く休みたい、かな……?」 

漣「……ねぇ、そういえば最近……」 


漣「響、見ないよね……?」 


潮「そ、そういえば……」 

朧「……この間行われた作戦で、沈んだって噂があるよ」 

潮「え!? そそ、そんな……!」 

漣「……でもおかしくない? それなら既に私達知ってるはずじゃ……」 

曙「……隠してんのよ、提督と軍令部が」 

漣「どういう、こと?」 

曙「……自分達に都合の良い情報しか流さない。都合の悪いことは隠蔽する 
そういう連中なのよ……なんでそんな隠蔽をするのかは、知らないけど……」 

曙「今の提督に比べたら、前のクソ提督がどれだけマシだったか……」 

潮「曙ちゃん、あんまりそういう事を言っては……」 

漣「ま、噂は噂だからねぇ……何より大事になったら暁が黙ってないだろうし、 
本気にしないほうがいいと思いますよっと」 

曙「でも、あの提督ならやりかねないと思わない?」 


大鳳「……」 


今日も大鳳はどこか居心地の悪さを感じていた。 
ギスギスとした空気が渦巻き、鎮守府を覆う。膜のように。 
日に日に規模を増すそれは、最早大鳳以外でも感じ取る事が出来た。 



584: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 21:56:25.36 ID:JAZYyXaFo


大鳳「今日も勝った。私は今日も、勝ったんだ……」 


自分に言い聞かせるように、大鳳は呟く。 
今日の勝利を、自らの力を、確認する為に。 

大鳳はこれまでと変わらず勝ち続けていたし、勿論彼女自身 
深海棲艦に負ける気配など微塵も感じなかった。 
しかし、いつからか勝利を祝う者が減っていき、疲労感ばかりを口にする者が増えた。 
誰もが皆、この戦いの先が見えなかった。 
だから大鳳だけは、しっかりと勝利の積み重ねを意識した。 
そうすることで、少しでも事態が好転しているような気になるからだ。 

そんな時、彼女はふと、一人の艦娘の姿を発見する。 


まるゆ「……」トテトテ 

大鳳「あれは……まるゆさん?」 



585: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 21:59:43.99 ID:JAZYyXaFo

――鎮守府裏庭・外れ―― 



まるゆ「……ごーやさん、イムヤさん、イクさん……」 

まるゆ「まるゆ、また来ましたよ」 

まるゆ「もうオリョール海も潜水艦の独壇場ではなくなってしまいました」 

まるゆ「これからまるゆ達は……どうなるのでしょう?」 

大鳳「まるゆさん」 

まるゆ「? あ……、大鳳さん!」 


まるゆの表情が明るくなる。 
まるゆは陸軍工廠の艦娘。故に鎮守府にはあまり馴染めずにいた。 
そんな彼女と、大鳳は気が合った。 


大鳳「たまたま見かけたから……こんな所で何をしているの?」 

まるゆ「……先輩方と、お話していました」 

大鳳「……そう」 


まるゆの前にあるものは、何か文字が刻まれている石碑だ。 
大鳳は全てを悟った。 


まるゆ「先輩方は、まだまるゆが着任したばかりの頃……敬礼の仕方も分からない 
まるゆにたくさんのことを教えて下さいました。みなさんは素直じゃないので、 
そんなことをしてやった覚えはないって怒るでしょうけど」 

まるゆ「皆さんの、そういうところが好きだった……」 

大鳳「いい先輩だったんですね」 

まるゆ「ええ、ほんとに。先輩方がいなければ、まるゆなんて三日で陸軍に戻ってましたよ 
満足に潜れないし、魚雷も打てない。そんな潜水艦に、本来なら居場所なんて無かった筈なんです」 

まるゆ「そんなまるゆに、先輩方は居場所を作ってくださった。知っていますか?  
当時の潜水艦隊は連合艦隊屈指の練度を誇る精鋭部隊だったんですよ? 
一番最初に未制圧の海域に進むのはいつも潜水艦隊だった。 
そんな艦隊にいてもいいんだって思うだけで、まるゆは誇らしかった。 
今はもう補給線分断任務が中心となってしまいましたが……」 

大鳳「潜水艦は随分数が減ってしまったものね……」 


586: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 22:05:48.16 ID:JAZYyXaFo


まるゆ「……まるゆ、実は一度解体されかかってた事があるんです」 


大鳳「えっ……?」 

まるゆ「ふふふ、驚きましたね。まぁそうなりますよね……」 

まるゆ「寧ろそういう話が出てこない事のほうがおかしいんです。 
元々軍令部の方は陸軍の船をあまり良く思っていなかったようですし……」 

大鳳「……陸軍と海軍の確執には、本当に頭を悩まされるわね」 

まるゆ「そんなこともあって、悲しいけどまるゆはしかたがないかなぁって思ってたんですけど…… 
その矢先ですよ、先輩方が突然オリョールクルージングをボイコットし始めたんです」 

まるゆ「先輩方は『働きたくないでち!』『休みよこすの!』といつもの論調を 
展開していましたが……今思えばアレはまるゆのためにやっていたのかなって。 
潜水艦の数が足りなくなって、まるゆがオリョールに借り出されるようになって 
そのまま解体の話は立ち消えです」 

まるゆ「オリョール海のシーレーン確保は、それほど重要で、それを担う先輩方の存在は 
軍にとってとても大きかった……」 

まるゆ「まるゆ、思うんです。昨今の戦線の激化は、東方作戦後からと言われていますけど…… 
そうじゃない。先輩方が沈んだその日から、始まっていたんじゃないかって。 
オリョール海のシーレーンを破壊された、その時から……」 

まるゆ「先輩方は本当に、強かったんです。多分一番戦果を上げていたのは、 
先輩方潜水艦隊だったはずです。今じゃ信じられないかもしれませんけど。 
でも、敵の戦艦や空母をあんなに沈めたのは、先輩方だけだと思うんです 
いつも皆さん少ない損害で帰ってきたので、わからなかったかもしれませんが…… 
オリョール海は皆さんが思うよりもずっと過酷な海域で、 
でもそれを悠々周れたのは、並外れた先輩方の練度があったから」 


まるゆ「戦艦や空母を、先輩方が食い止めてくれていたから 
……皆余裕を持って戦えたんです」 



587: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 22:08:39.63 ID:JAZYyXaFo

まるゆ「でもその事実を、皆さんは知らない。先輩方は功績を誇らない人達だったから。 
出撃の時なんていつも文句を言っていましたし、とても働き者には見られなかったでしょう。 
でも、先輩方はその実、誰よりも平和の為に戦っていたんです。称賛の言葉さえ求めず、 
いくら酷使されてもそれを笑い話にして……どんな過酷な任務もこなしてきました」 

まるゆ「そういう方達だったんですよ」 

大鳳「私も、彼女達にお会いしてみたかった」 

まるゆ「面白い方達ですよ?」 

大鳳「……それがかなわないのは本当に、残念」 


まるゆ「……先輩方はあんなに頑張っていたのに……彼女達の死は、 
こんな質素な石一つで済まされてしまうんですね」 


まるゆ「まるゆは悔しいです……戦線を支えていたのは、先輩方だった……!」 

まるゆ「なのに、こんな扱いって……あんまりでしょう!」 

大鳳「っ……」 


大鳳は何も言えなかった。自分は毎日のように褒め称えられ、チヤホヤされている。 
そんな自分が彼女達に何を言えるというのだろう。後ろめたく思う大鳳は、閉口するばかりだった。 



588: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 22:12:10.54 ID:JAZYyXaFo

――鎮守府・食堂―― 


陸奥「あら、大鳳じゃない。今からご飯?」 

大鳳「え、ええ……」 

陸奥「じゃあ同席してもいいかしら?」 

大鳳「いいですよ。私も今、丁度話し相手が欲しかったところですから……」 

陸奥「あらあら、何か悩み事?」 

大鳳「自分は今まで如何に、何も知らなかったんだろうって、気付かされたんです」 

陸奥「……一体どうしたの?」 

大鳳「戦果を上げて、評価されるというのは当たり前のことだって思ってました 
でもそれは、恵まれていたことなんですね……」 

陸奥「……そうねぇ、評価される子がいれば、中々評価されない子もいる。 
二人が同じくらい頑張っていたとしても、結局は人の主観によるものだから」 

大鳳「そういうものでしょうか……?」 

陸奥「重要なのはその後じゃない? 自分は評価されている。あの人は評価されない 
かわいそう。おしまい。それじゃ駄目でしょ?」 

大鳳「そうですよね……」 

陸奥「せっかくそれに気付けたんだもの、ならば考えるべきよ、その意味を。 
そして自分がどうすべきなのかを」 

大鳳「意味、ですか……?」 

陸奥「あらゆる事に意味はついてくる。それを見極めるのが大切なのよ? 
あ、そこの七味取ってくれない?」 

大鳳「はい、どうぞ」 

陸奥「それでなんだけど、例えb……」 


バサッ 


大鳳「あっ……」 


大量の七味がむっちゃんのラーメンを襲う! 


589: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 22:24:54.05 ID:JAZYyXaFo

陸奥「……と、とまぁ、私ってこんなふうに運が悪いじゃない?」 

大鳳「ええ、まぁ……」 

陸奥「私の不幸にも、何か意味があるんじゃないかと考える」 

大鳳「……それで、陸奥さんの不幸にはどんな意味が?」 


陸奥「戦いの中で不幸が起きないように、日常生活の中で不幸を消費していると考えているわね!」 


大鳳「……ポジティブ・シンキング、ですね」 

陸奥「……まぁ、それで沈んでちゃあ世話ないけどね」ズーン 

大鳳「いきなりネガティブにならないでください」 

陸奥「まぁそれはともかく、何事にも意味があって、それをどう捉えるかが 
大切だってことを言いたいの」 

陸奥「って、こんな答えじゃ駄目かしら?」 

大鳳「……いえ、陸奥さんの言っていることは正しいと思います」 

大鳳(意味か……きっと、当たり前になりすぎて忘れてしまっていることを 
ちゃんと見なおせってことかしら…・・?) 

陸奥「……ならいいけど。大鳳、あなたに悩んでいる暇なんてないわよ? 
期待の新人なんだから」 

大鳳「……そうですよね。もっと頑張らなくちゃ」 

陸奥「あなたの働きには皆期待してるんだから、ドンドン活躍してやりなさい」 

大鳳「……はい!」 


陸奥の言葉で、大鳳の心は少しだけ軽くなった。 
そして彼女は更に戦果を上げることを、決心したのだった。 


大鳳「さぁ~って、私もお刺身、いただきます。お醤油お醤油っと」 


カポン 


大鳳「あ……」 


大量の醤油が大鳳の刺身を襲う! 


陸奥「そういえば、あなたも不運艦だったわね……」 

590: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 22:28:07.93 ID:JAZYyXaFo

―――――― 
――― 
― 


――戦闘海域―― 



北上「あたし達の司令官は無能だー!」バシュン 


バコオォォォン!! 


北上「よっし、今日もお仕事完了!」 

大井「北上さんの惚れ惚れする雷撃……思わず見とれちゃう」 

初霜「敵艦隊、全滅、ですね」 

初春「相変わらず凄まじい雷撃じゃの~、北上は」 

摩耶「それよりもさっきのはなんだよ……確かにあいつは無能だけどな」 

北上「言いたくもなるって。今すべきことはこの海域に出撃することじゃないってのにさ 
……ホント、無能の極み!」 

初霜「ですが……」 

北上「ここの敵なんてさして脅威じゃないんだよ。あたしらを出すには過剰戦力ってヤツよ。 
本当に戦力が必要なのはきっと、前線泊地の方なんだ……」 

大井「北上さん……」 

北上「前線ではこんなのとは比べ物にならない程の深海棲艦が待ち受けてる。 
あたしらはこんなことしてる場合じゃないんだってば……」 

摩耶「んなもん、皆わかってる……わかってるんだよ……!」 

大鳳「……」 


大鳳「今日も大鳳は勝利しました」 


大鳳(勝利したはずなのに……) 



まるで戦況が好転している気がしないのは、何故? 




591: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 22:29:42.10 ID:JAZYyXaFo

――鎮守府・港―― 


大鳳「艦隊が帰投しました」 

北上「じゃ、おつかれ」 

摩耶「おう、おつかれ」 

初霜「おつかれ、さまです」 

大鳳「……おつかれさまです」 


事務的で、最低限の挨拶を交わし、艦隊は解散する。 
まだ報告も終わっていないにもかかわらず……。 
それ程までに、艦娘達は疲労しきっていた。 

先の見えない戦い。連携の取れない鎮守府。摩耗する戦力。 
それらの要因によって流入する不安を、大鳳は否定する。 


大鳳「私は今まで、ずっと深海棲艦に勝ち続けてきた……」 

大鳳「私は深海棲艦より強い! だから大丈夫!」 


それだけが、己の力だけが……今の大鳳の支えだった。 



592: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 22:32:09.77 ID:JAZYyXaFo

――鎮守府・空母演習場―― 


ヴゥゥゥン…… 

大鳳「烈風と流星……この編隊が負けるはずない!」 

長門「……熱心だな、関心な事だ」 

大鳳「長門さん……ですか」 

長門「しかし、あまり根を詰め過ぎてもいけないよ。 
体を壊してしまっては元も子もない」 

大鳳「……別にこれくらい、どうってことないです。もうそろそろ新鋭機も 
配備されますし……それに見合う技量を身につけないと。経験が浅い事だけが 
この大鳳の欠点ですから!」 

ヴゥゥゥン…… 

大鳳「新鋭機を搭載して、ますます強くなる私! 期待しててください!」 

暁「わー! 大鳳さんってやっぱり凄いのね~! 出撃の後も訓練だなんて!」 

大鳳「暁さん。どうしたんですか、こんなところで」 

暁「最近激しい戦いが多くなってきたでしょ? だから空母の戦い方を見て 
参考にしようと思ったのよ」 

長門「ン~……駆逐艦には空母の戦い方なんて全然参考にならないのに…… 
暁はかわいいなぁ!」 

暁「い、いつも鎮守府にいる長門さんは黙ってて!」 

長門「」 



593: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 22:34:36.77 ID:JAZYyXaFo

大鳳「勉強熱心なのは大変素晴らしいことです。偉いわ」 

暁「もー、子供扱いして! 失礼しちゃうんだから!」 

大鳳「ふふふ……」 

暁「……あの、大鳳さん……一つ、聞いてもいいかしら?」 

大鳳「何かしら?」 



暁「暁達は……きっと、深海棲艦に勝てるわよね?」 



大鳳「……!」 

暁「……ちょっと不安になっちゃって。響がいないから、 
心細くなっちゃったのかな……?」 

大鳳「……それは、その」 


大鳳は、すぐに答えてやることができなかった。 
一言「大丈夫」といえば済むはずなのに、どうしてもその一言が出てこなかった。 

そして大鳳は、その事実が信じられなかった。 


暁「あ……」 

暁「ご、ごめんなさいっ、つまらないこと聞いちゃって……勝てるに決まってるわよね! 
あはは、何下らないこと聞いてるんだろ、私……」 


長門「……大丈夫だ」 



594: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 22:35:46.82 ID:JAZYyXaFo

暁「長門さん……?」 

長門「我が艦隊にはこのビックセブン・長門がついている。深海棲艦など、 
この41cm連装砲で一捻りよ!」 

暁「……そうよね!」 


暁の表情がぱぁっと明るくなる。 


暁「長門さんはいつも鎮守府にいるけど、出撃した時は凄いものね!」 

長門「戦艦長門は最終兵器だ。普段は温存されている故に出撃は少ないが…… 
このビックセブン長門が居る限り、艦隊に敗北はない!」 

暁「なのです!」 

大鳳(なんて、心強い言葉……あれなら、暁さんも……) 

大鳳「……!」 



大鳳は見てしまった。 
長門の目を。酷く疲れ、精神のすり減った目を。 




595: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 22:37:37.56 ID:JAZYyXaFo

暁「それではお暇、なのです」 

長門「うむ!」 

大鳳「……」 

大鳳「長門さん」 

長門「ん? どうかしたのか、大鳳」 


大鳳「……私達は深海棲艦に、勝てますよね?」 


長門「……さぁね。私には皆目見当もつかない」 

大鳳「私には、大丈夫と言ってくれないんですね」 

長門「鎮守府に居ることの多い私でも、駆逐達に頼られるくらいはできる。 
だが大鳳……お前に頼られることは、もう私ではできないよ」 


長門「お前はもう、私よりも強い」 


大鳳「そんなこと、無いですよ……」 

長門「ふっ……謙遜しよる。いいんだ、わかっている。 
もう戦艦の時代ではないことぐらい……」 

大鳳「連合艦隊の顔ともいうべきあなたが、らしくない……」 

596: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 22:39:34.71 ID:JAZYyXaFo

長門「らしくない……か。そうだな……」 

長門「以前の私であれば、お前にも大丈夫と即答していただろうな 
戦艦の時代が終わろうと、関係ない。皆はこの長門が守るとな」 

長門「今でもその気持ちに変わりはない。負けるつもりもない。 
だが……なんだろう。あまりに先が見えないものだからか……わからなくなってしまった」 

長門「見えていたはずのものが見えなくなってしまった……といった感じか。 
今の私の瞳は、酷くくすんでいるからな。あの頃見えていた勝利のビジョンは、 
今となってはもう見えなくなってしまったよ」 

長門「どうしようもない上層部と、一向に減らない深海棲艦達。ビックセブンといえど、 
嘆きたくもなるさ……」 


はぁ……、と溜息と共に押し出される疲労感。 
長門は孤独だった。連合艦隊の顔ともいうべき彼女は、頼られこそすれど、 
誰かに頼る訳にはいかなかった。 

そしてその姿は、大鳳自身にも重なった。 
大鳳は気付かされる。これから自分は誰にも頼ることができないのだと。 


大鳳「頼れるのは……己の力だけ」 

大鳳「大丈夫……大丈夫……私は、強い」 

長門(……この感覚、かつて感じたことがある) 




長門(戦争末期の、終末へ至るあの感じだ……) 





597: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 22:42:55.05 ID:JAZYyXaFo

――鎮守府正面海域―― 


大鳳「……疲れた。もう、訓練する気力も起きない」 


大鳳は自らの内に生まれようとする不安を必死に追い出す為に、 
ひたすら鍛錬に打ち込んでいた。 
気がつけばもう空は暗く、月が海を照らしている。 


大鳳「夜戦は無理ね……そろそろ帰ろうかしら?」 

大鳳「……あら?」 


そろそろ引き上げようとしていた矢先、大鳳はある艦娘の姿をその目に収める。 


大鳳「鈴谷さん……?」 

鈴谷「あり? 大鳳ぢゃーん! なになに? こんな時間まで何やってんの?」 

大鳳「訓練ですけど……」 

鈴谷「やー、真面目だねぇ~。毎度、お疲れ様でーっす」 

大鳳「鈴谷さんは、こんな遅くにどこへ行くつもりなんですか……?」 

鈴谷「んー……」 


鈴谷「ちょっと、前線の泊地まで……ね?」 


大鳳「はい?」 

鈴谷「いやぁ~、熊野にお気に入りの香水貸してたの思い出して~ 
返してもらおうと思ってさ。くまのんは結構抜けてるんだよねぇ」 

大鳳「……あなたが、何を言っているのかわかりません」 

大鳳「こんな夜中に一人で、前線の泊地に向かうですって? 
そんなの……自殺行為ですよ!」 


鈴谷「だったら、何?」 



598: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 22:45:52.31 ID:JAZYyXaFo

大鳳「何って……」 

鈴谷「鈴谷はもう行くって決めたし。止めても無駄だよ」 

鈴谷「大鳳も知ってるでしょ? 前線の状況を……」 

鈴谷「戦線は押され最前線にあった泊地は落ちた。そして今……熊野が居る 
泊地は確実に深海棲艦に包囲され始めてる」 

鈴谷「このままじゃ、熊野がいる泊地は……!」 

大鳳「落ち着いてください。近い内にも鎮守府が援軍艦隊を組んで……」 

鈴谷「……鎮守府? 今の鎮守府が何かすると思う?」 


鈴谷「鎮守府は、熊野がいる泊地を見捨てるつもりだよ」 


大鳳「え……?」 

鈴谷「強い艦娘はもう絶対に本土近辺から動かさないだろうし。 
……結局今の軍令部の連中は、我が身が大切なんだよ」 

大鳳「そんな……」 

鈴谷「でもまぁ実際、人々を守る為には本土の守りは手薄にしちゃいけないし…… 
半端な戦力を寄越しても無駄に艦を失うだけだって、それもわかってる」 

大鳳「なら……!」 

鈴谷「だから、行くのは鈴谷だけ。無謀だってわかってるよ。……わかってる。 
でも、熊野を見殺しになんてできないんだ」 

鈴谷「これは鈴谷のわがままだから、他の人は巻き込まないよ。 
鈴谷一人なら本土の守りに影響はないから」 


鈴谷「だからさ……ねぇ、ここは見逃してよ」 



599: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 22:48:33.47 ID:JAZYyXaFo

大鳳「……だめですよ、そんなの、駄目です!」 

大鳳「無駄に命を捨てに行くようなものですよ!」 

鈴谷「ここで行かなかったら、その後の鈴谷の命なんて、嘘だよ」 

鈴谷「そんなことしてまで、鈴谷は嘘の人生を歩みたくないし」 

鈴谷「熊野を助けたいって気持ち、熊野に対する想いだけは 
……絶対に嘘なんてつきたくない!」 

大鳳「……勝手に出撃なんて、許されませんよ。連合艦隊から除籍されるかもしれない」 

鈴谷「栄光の連合艦隊……か。でもね、大鳳……」 



鈴谷「仲間一人助けられない連合艦隊の名に、意味なんて無いよ」 



大鳳「!」 

鈴谷「そんなのこっちからでてってやる。連合艦隊クソ食らえだ 
勝手に除籍でもなんでもしてくれていいよ」 

大鳳「駄目ですよ! 行かせません! 鈴谷さんのお気持ちもわかります 
けれど! 私も……目の前で命を捨てに行くような真似を許す訳にはいかないんです!」 

鈴谷「……大鳳は優しいね。でも……」チャキ 


鈴谷は連装砲を構える。咄嗟に身構える大鳳であったが、砲身は鈴谷自身の頭へ向いた。 


鈴谷「ここは絶対に通してもらうかんね。じゃなきゃ鈴谷、自分の頭ぶちぬくし」 


大鳳「鈴谷さん……ッ!」 

鈴谷「来ちゃ駄目だよ~……そう」 

大鳳「くっ……なんで……?」 

鈴谷「そうだよー。それで……いいんだよ」 


鈴谷は単艦、前線泊地に向けて出撃する。 
彼女の遙かなる航路を、大鳳は黙って見送ることしかできなかった。 




―――――― 
――― 
― 

600: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 22:51:19.91 ID:JAZYyXaFo




――それから大鳳は、徐々に摩耗していった。 




曙「……」 

潮「……」 

曙「私達が、私達が何したっていうのよ……!」 

潮「こんなの、ひどすぎます……!」 

大鳳(また誰か、沈んだの……?) 


戦況は悪化の一途を辿り、次々と艦娘は減っていった。 


夕張「無茶な作戦ね……でも、これも命令」 

夕張「せめて、最後に皆が助かるデータが取れればいいけど……それも無理そうね」 

大鳳(……また、無駄に誰かを沈めるの?) 


戦況の悪化に伴い、軍令部は無茶な作戦をいくつも要求してきた。 


大鳳「頑張らなくちゃ……力のある私が頑張らなくちゃ……」 


それでも大鳳は前を向いて戦い続けた。彼女は恵まれた性能を持っていて、 
深海棲艦にも負けなかった。それが彼女の唯一の原動力だった。 
故に彼女は、使命感に突き動かされ続けた。 

それはきっと、辛く、厳しいものだったに違いない。 
それでも彼女は、その歩みを止めることはなかった……。 



あの時までは。 




601: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 22:54:59.10 ID:JAZYyXaFo

――海上・巡航艦隊―― 


大鳳「…………」 

羽黒「あの、鈴谷さんの除籍が、本日決まったようですね……」 

摩耶「ああ、そうか……そういえばあいつ……いなくなったんだったな」 

鳥海「異例のことだそうですよ。この除籍は……」 

北上「あたしらは艦娘だからねぇ~。船の頃と同じと思ってもらっちゃあ困るってもんよ」 

大井「いっその事、私達も抜けませんか? 北上さん♪」 

北上「それもいいかもねぇ~」 

摩耶「馬鹿なこと言ってんじゃねぇよ……ったく」 

大鳳「……皆さん、任務中ですよ?」ニコ 

摩耶「お、おう……」 

大鳳「……」 

摩耶「お、おい鳥海……あいつ大丈夫なのかよ……あんな疲れた笑顔してる奴 
初めて見たぜ……」 

羽黒「大鳳さんは最近ずっと旗艦を務めていますから……えと、お疲れなんでしょうか?」 

摩耶「あんなんで旗艦が務まるのかよ……心配だぜ」 


大鳳は休みなく出撃していた。それは本人きっての願いだった。 
敵と戦えば、そこには安心があった。敵を倒せば自分の力を確認できた。 
大鳳は深海棲艦を沈める機械となっていた。 


「水偵隊より入電! 敵艦発見!」 

大鳳「……敵ですか」 


今日も苦戦すること無く戦いは終わるだろう…… 
そう、大鳳は高を括っていた。彼女は自分の勝利を疑わなかった。 



602: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 22:57:04.30 ID:JAZYyXaFo

羽黒「きょ、距離、方角は?」 

「距離3万、まるきゅーまるです!!」 

摩耶「30km……余裕を持っていくか」 

大鳳「攻撃隊発艦用意。艦隊は輪形陣を維持しつつ針路を変更」 

大鳳「いい風ね……今日もアウトレンジで一網打尽よ」 

「第一次攻撃隊、発艦します!」 

北上「お、お得意のアウトレンジ戦法ですか~?」 

大井「今日も私達の出番はなしかしら……?」 

大鳳「……何が起こるかわかりません。気を引き締めてください」 


そう言っていた大鳳の気が一番緩んでいたのかもしれない。 


「!? 報告……敵艦隊に姫級有り! 繰り返す! 敵艦隊に姫級有り!」 


大鳳「……姫、級?」 



それは今まで大鳳が戦ったことのない深海棲艦だった。 



「水偵より入電! 制空権……五分の模様!」 


大鳳「制空権が取れなかった……?」 

北上「あれ? なんか……様子がおかしい感じですか?」 

「敵艦隊針路変更! 艦隊は間もなく敵艦隊と衝突します!」 

摩耶「おい、大丈夫か……?」 

大鳳「……いいわ。私は装甲空母。接近戦に持ち込まれても、何の問題もありません」 

大鳳「このまま敵を迎え撃ちます!」 


603: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 22:58:24.96 ID:JAZYyXaFo

――戦闘開始―― 



戦艦タ級「……ッ!」 

羽黒「ふ、フラグシップ……!」 

北上「めんどくさそ……」 

装甲空母姫「……クスッ」 

大井「あっちには姫級もいるわ……」 

大鳳「嘘……あれってもしかして、装甲空母……?」 

装甲空母姫「……ッッッ!」 


装甲空母姫、艦載機を発艦。 


大鳳「深海棲艦のくせに……いいわ、私が相手してあげる!」 

大鳳「皆さん、そちらは任せます! 私は……敵旗艦を沈める!」 

摩耶「おい、旗艦が指揮を放棄するなって……」 

大鳳「烈風と流星の編隊を見せてあげるわ!」 

摩耶「聞いちゃいねぇ……」 




604: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 23:00:26.75 ID:JAZYyXaFo


装甲空母姫「……ッ」 


装甲空母姫は直掩機を伴い突進。 


大鳳「空母が突撃!? 舐めているのかしら……まずは烈風でその邪魔な直掩機を 
墜します! 戦闘機の皆さん!」 

「了解!!」 


現在軍で尤も性能が高いとされている戦闘機・烈風。その機体性能をもってすれば、 
制空権が確保できなくとも直掩機を剥がすことくらいは容易に行えた。 
姫級の直掩機は次々と烈風に墜とされていく。 


大鳳「よし、後は急降下爆撃で沈めます!」 


装甲空母 大鳳、彗星一二甲型爆撃機を発艦。彗星はすぐさま姫級を捉える。 



大鳳「今よ!」 



ドオォォォォォン……! 



大鳳「……直撃ね、姫級なんて見たこと無いからどんなものかと思ってたけど…… 
意外と大したこと……」 


ドォン! 


大鳳「……え?」 


大鳳「う、嘘……被弾!? 燃料庫は!? 燃料は大丈夫!?」 


装甲空母 大鳳、中破。 



605: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 23:02:45.89 ID:JAZYyXaFo

装甲空母姫「……クスッ」チャキ 

大鳳「……なんで、空母が砲撃なんか……」 

「大鳳さん! 第二射きます!」 

大鳳「!! 機関部は大丈夫……艦載機もまだ飛ばせる!」 

大鳳「お、面白いじゃない! この程度、大鳳はびくともしないわ!!」 


装甲空母 大鳳、遊撃に回っていた流星と烈風を呼び戻し装甲空母姫に向ける。 
幸い、姫級は先程の爆撃で中破しているようだった。 


大鳳「状況は五分と五分……いいわ、やってあげるんだから!」 


大鳳はそのまま流星と烈風の編隊でゴリ押しした。 
対する装甲空母姫も艦載機を繰り出したが、今一歩烈風には及ばない。 


大鳳「一気に畳み掛けます!!」 



ドッゴオオオオオン!! 



大鳳の攻撃隊による二度目の攻撃! 


装甲空母姫「……、……」 


姫級、行動不能。 


大鳳「……やった」 


606: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 23:04:41.73 ID:JAZYyXaFo

大鳳「中々に強敵だったけれど……最後に勝ったのは私よ!!」 


大鳳は姫級に対して声高に宣言する。その力を誇示するかのように。 


装甲空母姫「……ニヤリ」 


しかし姫級は悔しがるでももだえ苦しむでもなく、勝ち誇った顔をしていた。 


大鳳「……」ゾクッ 

大鳳「あ、あなたなんかすぐ沈めちゃうんだから……! 攻撃隊!」 


その時だ。 


ドン! 


大鳳「……な」 

大鳳「なに、これ……」 


装甲空母 大鳳、大破。 



戦艦タ級「……」スチャ 

大鳳「そんな、戦艦……!?」 

大鳳(やだ、あし、うごかな……) 

戦艦タ級「……」ジリジリ 

摩耶「何やってんだ! 敵は一人じゃねーんだぞ!」 

大鳳「ぁ……」 


この時ようやく、大鳳は自分が慢心し、身勝手な戦いをしていたことに気付いた。 


戦艦タ級「……ッ」 

大鳳「あ……あ……」 


沈められる。明確な殺意を持って、深海棲艦は主砲をこちらに向けている。 
こんな色濃い殺意を、大鳳は初めて間近で感じた。そして彼女のその瞳は……恐怖で染まった。 



607: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 23:06:29.21 ID:JAZYyXaFo

戦艦タ級「ッッッ!!!」ドォン!!! 

大鳳「嫌っ……」 

大鳳(死にたくない……!) 

羽黒「……!!」 



ゴオォォォォォン……! 



大鳳「ぅ……?」 

羽黒「やらせは、しません……!」 

大鳳「え? え? 羽黒、さん……?」 


重巡洋艦 羽黒、大鳳を庇い被弾。被害甚大。 


鳥海「嘘……!」 

大鳳「わ、私のせいで……!」 

羽黒「……あなたが沈むのを、二度も見たくはないから」 

大鳳「私、わたしは……あぁ」 


止めどなく涙が流れてくる。 
彼女は完膚なきまでに"敗北"した。そのせいで、今まで彼女の心の近郊を 
保っていたものは一切合切崩壊し、涙腺を決壊させた。 


608: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 23:07:48.00 ID:JAZYyXaFo


戦艦タ級「ッ!!!」 


戦艦タ級、主砲を構えさらなる砲撃へと移ろうとする。 



北上「まー、そうはさせませんよっと。大井っち、いくよー」 

大井「はい、北上さんっ」 



バシュンバシュンバシュンバシュンバシュバシュバシューン! 



戦艦タ級「!?」 


バコオォォーーン!! 


魚雷の炸裂音。水しぶきの音。黒く焦げる硝煙。 
その全てが涙の膜に揺れて輪郭が煩雑になる、 


大鳳「ぁ……」 


大鳳の意識は、そこで途切れた。 



609: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 23:09:47.21 ID:JAZYyXaFo

――??―― 


ひた……ひた…… 


大鳳「ぅ……ううん?」 

大鳳「あれ、ここは……?」 


大鳳の視覚に認識が宿る。そこは何もない黒の線で縁取られた白い空間だった。 


大鳳「一体ここは……もしかして私、死んだの?」 


ひた……ひた…… 


猫「にゃーん」 

大鳳「ねこ……?」 



「あなたは死んでなどいませんよ。装甲空母・大鳳さん」 



大鳳「誰!?」 

??「私は誰でもない。しいて言うならばそう、この世界の……」 


エラー娘「エラーのような存在」 


そう言うと、少女は擦り寄ってきた猫の両手を取り、持ち上げた。 


大鳳「あなた……エラー娘?」 


大鳳はいつか青葉に聞いた与太話を思い出した。エラー娘。 
……一部の艦娘の前にしか現れない謎の存在。 



610: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 23:13:31.76 ID:JAZYyXaFo

エラー娘「そう呼ぶ人もいるでしょう」 

大鳳「……ここは夢? それとも現実?」 

エラー娘「それは些細な問題です。どちらもあなたの主観が体験し得る、 
一繋がりの世界なのですから」 

大鳳「あなたは何なの? 何の目的で私を……」 

エラー娘「私がお目にかかるのは本来、普通の艦娘では至れない領域に達した艦娘の皆さん 
だけなのですけれど……大鳳さん、あなたは特別です。その存在そのものが因果に反している」 

大鳳「意味がわからないわ……」 


エラー娘「あなたは運命の超越者足りえるかもしれないということです」 


大鳳「何、何なの……運命の超越者?」 

エラー娘「時に大鳳さん。あなたは自分が何の為に生まれてきたのか、 
考えたことがありますか?」 

大鳳「……何の、為……ですって? そんなの、戦う為に決まっています!」 

エラー娘「戦って、その後には何があるんですか?」 

大鳳「平和な、世界よ!」 

エラー娘「平和なんて無い。人々が争う世がやってくるだけです」 

エラー娘「ならば、人々が一致団結して深海棲艦に立ち向かう、 
今の世の中のほうがよっぽどいい。そうは思いませんでしょうか?」 

大鳳「……ふざけないで! 今が良いわけないわ! こんな、こんな救いのない世界……」 


611: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 23:14:44.22 ID:JAZYyXaFo

エラー娘「そう。この世界には救いがない。あなた達艦娘は元々滅びの運命に定められた存在。 
いかに姿形を変えようと、因果は終末に収束する。それは抗いようのない事実なんですよ」 


エラー娘「……それでもあなたは、立ち向かいますか? この終末に向かう運命に」 


大鳳「……」 


大鳳は答えられなかった。 


エラー娘「……残された時間はもうあまりありません。選択を誤らないでください。 
さすればあなたは、運命の超越者足りえるかもしれない……」 


大鳳「ぁ……待って! あなたは一体何者なの!?」 


そこで大鳳の意識は回帰した。 





612: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 23:18:36.31 ID:JAZYyXaFo

――鎮守府・修理ドック―― 



大鳳「……はっ!」 

研究員「おや~、起きたみたいでござりまするなぁ~」 

大鳳「あなたは……ッ! いいえ、そんなことより羽黒さんは!? はぐ……痛ッ……」 

研究員「あまり動くなよ。運び込まれてからまだ三日しか経っていないんだ」 

大鳳「でも、羽黒さん……羽黒さんが!」 

研究員「心配し過ぎだって。あの子なら、隣のドックでお休み中だよー」 

大鳳「え……そうなの?」 

研究員「気になるならあとで見に行け」 

大鳳「……そう、……よか、た……!」 


大鳳「本当に、よかった……!」 


吹き出した涙が、ドックに溜まる通常修復剤の中に解けていく。 
大鳳は心の底から安堵した。心の緊張が抜け、涙はより勢いを増していった。 


研究員「あなたと同じく、長期入渠コースよ。全く……無理し過ぎなんだからぁ~」 

大鳳「……私は、今まで深海棲艦に負けたことがなかったんです」 

研究員「自慢か?」 

大鳳「でも、今回は負けました」 

大鳳「私は強くなんかなかった。そして……もう、諦めが付きました」 

大鳳「我慢しなくていいんだって。この不安を我慢することはないんだって」 


大鳳「ああ、もう、私達は……終末に向かってるんだって」 



研究員「…………」 

大鳳「今まで沢山沢山、頑張ってきた、けど……駄目だった。今まで、見ないふりを、 
してたけ、ど……ぐすっ……駄目だった……」 

大鳳「頑張れば頑張るほど、現実が、見えてきて……それでも、勝ち、続けてたから 
それだけが、私、の、真実だった……!」 

大鳳「でも、負け、たから……現実を、突き付けられたから…… 
今まで無視してたこと、全部、無視できなくなって……!」 

613: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 23:21:23.86 ID:JAZYyXaFo

大鳳「……前線には、もっと強い深海棲艦が居るって、知ってます 
私達が深海棲艦と渡り合えてたのは、前線の艦娘さん達が食い止めて 
くれてるからだって知ってます……」 

大鳳「そんな前線がもうすぐ崩壊して、敵の本隊がこちらにやってくるっていうことも 
知っています……勝ち目がないってことも全部全部、知っています……!」 

大鳳「でも……それを受け入れて終末を迎えられるのは、良かったかもしれないわ……」 


研究員「……たった一度の敗北で、何をそんなにへこたれてるのさ!」 


大鳳「でも……」 

研究員「……あなたには、因果を克服する力がある」 

大鳳「そんな力、ないわ……」 


研究員「ならば、あなたは何故、今もこうして生きているの?」 


大鳳「へ?」 

研究員「ならばあなたは、何故今までこんなに沢山の出撃をして、沢山の戦果を上げられたの?」 

研究員「艦娘は皆、遅かれ早かれかつての因果をたどりつつある。それはこの世界の因果なのか、 
私達が持ち込んだ因果なのかはわからない……」 

研究員「……あなたはかつて、何の活躍もせず、たかだが魚雷一発で沈んだ……」 

研究員「でも今のあなたは違う……勝利を重ね、みんなが頼れる空母になった」 

研究員「……それは、因果を克服したと言えるのではないかと思う、です」 


614: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 23:23:49.44 ID:JAZYyXaFo

大鳳「私は……因果を、克服した……?」 

研究員「あなたは出撃して、戦って、そして帰ってきた……それだけでも 
褒められるべきこと、です」 

大鳳「そんな当たり前の事……今更褒められるなんて、思わなかったわ 
当たり前すぎて、忘れてた……」 

大鳳「まぁ、かつての私は、そのあたりまえのことさえ叶わなかったんだけど……」 

大鳳「……やだ、また涙が出てきちゃうわ……本当に、情けない」 

研究員「それで、いいんです。今はたくさん泣いてください。そして辛いことは全部、 
涙とともにサヨナラです」 

大鳳「あなた……意外といい人だったのね」 

研究員「な、何のことだ? 私はプロフェッサー月子! マッドサイエンティスト! 
いい人などではない!」 

大鳳「ふふふ……」 


大鳳はかつて、魚雷一発で沈んだ空母だった。 
そんな彼女は今、尚も沈まずにいる。 

その事実が、ほんの少し大鳳の心を救ったのは、言うまでもないだろう。 




研究員「……あなたには力がある。だから、あきらめないで」 

研究員「大丈夫。因果はあなた一人で覆すものではないですから……」 




615: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 23:25:32.84 ID:JAZYyXaFo

――それから少し、時は流れて。 


――修理ドック―― 


大鳳「羽黒さん……調子はどうですか?」 

羽黒「はい……まだ戦線復帰は難しいみたいです……大鳳さんの方は……?」 

大鳳「私もまだちょっと……」 

羽黒「そう、ですか……」 

大鳳「……羽黒さん。あなたには、本当に感謝し尽くしても足りない程の恩義があります」 

羽黒「そ、そんな、私、あの時はただ必死で……」 


謙遜する羽黒の体には、タ級の砲撃の痕跡が生々しく刻みつけられている。 


大鳳(すごい傷……この傷を。私は彼女に負わせてしまった) 

大鳳(泣き言なんて言っていられないわ。私は……もう……!) 


大鳳は羽黒の傷を見て決心する。それはきっと、茨の道だ。 




617: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 23:28:08.57 ID:JAZYyXaFo
――鎮守府・港―― 



大鳳「いい風……」 


「……結論は出ましたか? 大鳳さん」 


大鳳「……エラー娘、さん?」 

エラー娘「呼び名はお好きにどうぞ」 

大鳳「何の結論、かしら?」 


エラー娘「あなたは立ち向かいますか? この終末に向かう運命に」 


大鳳「……ええ、立ち向かうわ」 

エラー娘「その先が滅びだとしても?」 

大鳳「全てを受け入れて、立ち向かいます」 

大鳳「私は私の因果を克服したんだもの。次は……この世界の因果を変えてみせる」 

大鳳「あなたは前に、私は何の為に生まれたのかって聞いたでしょう?」 

大鳳「今、ようやく理解した……! 私の生まれた意味、その本質が今ならわかる! 
きっとこの、どうしようもない世界の因果を克服するために……生まれたんだって」 

大鳳「艦娘は滅びの運命にあると、あなたは言った」 

大鳳「その運命だって、変えてみせる……!」 

大鳳「それが運命の超越者って、事なんでしょ……?」 

エラー娘「……さぁ? どうでしょうか?」 

大鳳「なんだっていいわ。私はもう、目を背けない」 


大鳳「……負けないわ!」 






618: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 23:30:09.27 ID:JAZYyXaFo


――それから時は、更に流れて。 

――司令官室―― 



提督「大鳳ちゃん。これさ……流星改って言うんだ」 


提督。私はあなたの事……信じていました。 


提督「新鋭機だよ! これさえあれば敵艦隊なんて怖くないよね!」 


着任して間もない私に、親切にしていただいて……本当に、嬉しかったんです。 


提督「今回も敵艦隊をぱぱっとやっつけちゃってよ、頼むよ」 


だから、私は貴方の事をずっと信じていたかった。 


提督「ほ、本当に頼むよ……この戦いに負けたら、決号作戦ってヤツを 
発動しなくちゃならないんだ。それだけはなんとしても避けたいからさぁ……」 


でも……今の提督を、私は信じられそうもありません。 
今回の作戦だって、最早作戦の体を成していないじゃない。だから…… 


大鳳「……提督」 

提督「ど、どうしたんだい……?」 



大鳳「今まで、ありがとうございました」 



提督「大鳳、ちゃん……?」 



さよなら、提督。 




619: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 23:35:15.19 ID:JAZYyXaFo

――鎮守府正面―― 



大和「……皆さん、揃いましたね」 

大和「これまでに、沢山の艦娘が散っていきました」 

大和「……私達は彼女達の想いに報いなければなりません」 


大和「誇りをもちなさい! 我々は誇り高き連合艦隊の艦艇です! 
深海棲艦達にその威光……見せつけるのです!」 


矢矧「……こうして見ると、何だか見たような顔ぶればかりね」 

霞「ああ、そうね。全く……どいつもこいつもなさけないったら!」 

初霜「やっぱり、こうなっちゃうのね……」 

浜風「何か……でも、何かが……違う……?」 


大鳳「そう……この、大鳳がいます!」 


大鳳「皆さん! この大鳳が必ずや艦隊を勝利に導きます!」 

矢矧「勝利にって……大鳳、あなた、本気で言っているのかしら?」 

大鳳「本気も本気です! 装甲空母は伊達じゃありませんから! 流星も改になったんですよ!」 

矢矧「そういう問題じゃ……」 

大和「……ふふふっ」 

矢矧「……大和?」 


620: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 23:36:12.06 ID:JAZYyXaFo

大和「なんだか、本当に勝てるような気がしてきました」 

大鳳「勝てる気、じゃなくて勝つんです!」 

矢矧「……あなた……どこか打ったの?」 

大和「何を言うの矢矧? 彼女は正しいわ……やるからには、勝たないと!」 

霞「あーもうバカばっかり! いいわ、とことん付き合ってあげる!」 

初霜「やっちゃいます!」 

浜風「それもありですね」 

矢矧「……はぁ。あなた達ときたらほんと……」 


矢矧「ま、いいわ……今度はすべてを護りきるから!」 



大和「矢矧も大概じゃない」 

矢矧「う、うるさいわね……」 

大鳳「さ、出撃しましょう!」 



長門(……大鳳、お前は一体……何がお前をそうさせるんだ?) 





621: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 23:41:56.90 ID:JAZYyXaFo
――最終防衛海域―― 



大和「敵は……こちらの10倍……いや、それ以上かもしれません」 

初霜「うん! ちょうどいいわ!」 

大鳳「ランチェスターの法則なんて知りません!」 

霞「そうよ! クズ共がいくら徒党を組んでもゼロにゼロを掛けるようなものだわ!」 

浜風「それは言い過ぎです」 

矢矧「今更後にも引けないしね……どうするのかしら?」 

大和「勿論、迎え撃つわ!」 

霞「骨のある奴がいればいいけど」 

初霜「雪風ちゃんの分まで、幸運発揮しちゃいます!」 

浜風「相手にとって不足なしです」 

矢矧「……ま、そういうの、嫌いじゃないけど?」 

大鳳「私はこの鎮守府に着任して、沢山の艦隊に編入されたけど……」 


大鳳「こうして艦隊の皆が一丸となったのって、初めてかも……ふふっ」 


つい最近まで感じていた居心地の悪さは、もうなくなっていた。 


大鳳「さぁ、装甲空母の力、見せてあげる!」 


人は私を愚かだと言うかもしれません。 

諦めれば楽になれるのにと、思うかもしれません。 

だけどもそれは、放棄してしまうことだから。 

仲間を、居場所を、想いを、投げ出してしまうことだから。 

可能性が少しでもあるなら……最期まで、戦い続けるわ。 



それが私の、選んだ選択。 



大鳳「私の意志は砕けない! 装甲空母は砕けない!!!」 


622: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 23:42:33.13 ID:JAZYyXaFo
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623: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 23:45:55.19 ID:UtAb2/ic0
乙です。 

本当ならこの大鳳の役は信濃が引き受けるはずだったのだがな。

624: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 23:49:35.15 ID:JAZYyXaFo
no title

一航戦やソロモンと違って予め話考えてた訳じゃないからやけに時間掛かったでち。 
後次回はぽいぽいちゃん好きは覚悟しておいた方がいいかもしれないっぽい?

625: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 23:54:12.94 ID:f8iYELls0
俺、絶対に一人たりとも轟沈させない。 
そう思うよ。

629: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/30(日) 23:59:26.27 ID:dhekB2bAO
てかちょっと待てゴーヤお前終戦まで一応生き残り組だろ! 
そして浜風はえーよ!

631: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/31(月) 02:16:04.91 ID:g6wDwqGq0
提督達の誰が誰かわからんくなってきた…

632: 携帯から 2014/03/31(月) 07:05:40.87 ID:sQzi+vxAO
基本的に一つの話には一人の提督しか出てきません 

泊地提督 
本編の提督 

元帥提督 
鎮守府編の提督 
死亡。 

無能提督 
大鳳編の提督 
鎮守府後任。 

です。無能提督はちょっと呼称ぶれてますがただのミスなので各自統一しておいてください。

633: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/31(月) 15:50:59.24 ID:kQGcmPBD0
作者直々に無能と言われる無能提督ェ…

634: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/04/01(火) 21:58:03.72 ID:Ovhmmxe/o
しかし史実どうり話を並べて、浮き砲台三人娘が最後になるんだとしたら 
部隊は壊滅状態になってるよな…